- 全体概要
・ホンダの走行データ収集・活用サービス「internavi(インターナビ)」のブランディングを目的に、電通(DENTSU INC. TOKYO)が企画・制作したプロジェクトです。
・1989年のF1日本グランプリ予選にて、アイルトン・セナが当時の世界最速ラップを記録した際の「走行データ」を、24年の時を経て実際の鈴鹿サーキット上に音と光で再現しました。
・Cannes Lions 2014において、既存のカテゴリーに収まらない革新的な作品に贈られる最高賞Titanium Grand Prixを受賞したほか、Cyber、Film Craft部門でもグランプリを獲得するなど、計15以上の賞を総なめにしました。
・テクノロジーを用いて「過去のデータから命を吹き出す」という試みは、広告の枠を超え、データ・ビジュアライゼーションと体験設計の新しい地平を切り拓きました。
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- 課題と背景:目に見えない「データ」の価値を物語化する
・ホンダの「internavi」は、膨大な走行データを収集して交通情報に役立てる高度なシステムでしたが、一般消費者にとっては技術的で難解であり、その価値が伝わりにくいという課題がありました。
・単に機能やスペックを説明するのではなく、ホンダが長年培ってきた「データへの真摯な姿勢」と、ブランドの象徴である「チャレンジ精神」を直感的に伝える必要がありました。
・ホンダの研究所に眠っていた、1989年のセナのF1マシンから記録されたテレメトリーデータ(アクセル開度、エンジン回転数、車速など)という、歴史的な「資産」に光を当てることにしました。
・この24年前の「古いデータ」こそが、現在の最新技術であるinternaviの原点(ルーツ)であることを示すことが、キャンペーンの核心的な戦略となりました。
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- 施策の仕組み:24年前のテレメトリーを「音と光」へ変換
・当時のセナが操ったマクラーレン・ホンダ MP4/5のエンジン音を、現存する実車からサンプリングし、アクセル開度や回転数のデータに基づいて正確に合成するシステムを開発しました。
・鈴鹿サーキットのコース全長5.8kmにわたって、何百ものスピーカーとLEDラインを設置し、データの時間軸と位置情報を完全に同期させました。
・セナが実際に走行したラインに沿って、エンジン音が猛烈な勢いで移動し、それに合わせて光が駆け抜けることで、あたかもそこに「目に見えないセナのマシン」が走っているかのような空間を作り上げました。
・デジタル上のデータを、音響工学、空間設計、プログラミングを駆使して物理的な「体験」へと変換する、極めて高度な実装プロセスが取られました。
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- 実装と成果:鈴鹿サーキットに蘇った伝説のラップ
・深夜の鈴鹿サーキットで実施されたこの再現は、一台のマシンも走っていないにもかかわらず、セナの咆哮がサーキットに響き渡るという幻想的で圧倒的な光景を生み出し、その様子を収めた映像は瞬く間に世界中に拡散されました。
・特設サイトでは、ユーザーが自分自身のブラウザ上でセナの走りを多視点から体験できるインタラクティブ・コンテンツを提供し、デジタル上でも深い没入感を提供しました。
・このキャンペーンの結果、internaviの認知度は劇的に向上し、ホンダの「技術革新」と「エモーション」の両面を強調するブランディングに成功しました。
・2014年のカンヌライオンズ審査員は、「テクノロジーを使いながら、これほどまでに人間的な感動を呼び起こした作品は他にない」と、その芸術性と技術の融合を絶賛しました。
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- 評価と示唆:テクノロジーによる「魂の再現」と社会的価値
・データの役割を、単なる「効率化のための情報」から、故人の情熱や努力を保存し、後世に伝えるための「魂の記録」へと再定義した点が最大の功績です。
・チタニウム部門での受賞は、広告の未来が「メディアを買うこと」ではなく、「新しい体験の形を発明すること」にあることを象徴しています。
・企業が持つ古い記録やアーカイブが、適切なクリエイティブ・ディレクションによって、現代においても最強のブランドストーリーになり得ることを証明しました。
・私たちへの示唆は、テクノロジーはあくまで手段であり、その目的は常に「人々の記憶や感情に触れること」にあるという、クリエイティブの本質を忘れないことの重要性です。
2014 54th ACC CM FESTIVAL
インタラクティブ部門:総務大臣賞/ACCグランプリ



