- 全体概要
・ノルウェーのベルゲンで毎年開催される、音楽、演劇、ダンスなどを網羅した北欧最大級の芸術祭のブランディングプロジェクトです。
・デザインエージェンシー「ANTI(アンティ)」が手掛け、従来の静的なロゴを廃し、音楽の構造を視覚化した「動的なアイデンティティ・システム」を導入しました。
・2014年のカンヌライオンズでデザイン部門のグランプリを受賞したほか、レッド・ドット・デザイン賞など世界中の主要な広告・デザイン賞を席巻しました。
・単なる見た目の刷新にとどまらず、観客動員数を倍増させるという圧倒的な実利(クリエイティブ・エフェクティブネス)をもたらした点が高く評価されています。
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- 背景と課題:伝統的な祭典をいかに「現代的」にするか
・1870年から続く長い歴史を持つフェスティバルでしたが、従来のブランドアイデンティティはクラシックで保守的なイメージが強く、新しい観客層へのアピールが不足していました。
・クラシック音楽からアバンギャルド(前衛芸術)まで多岐にわたるプログラムを、一つの統一された、かつ柔軟な視覚言語で表現する必要がありました。
・「フェスティバルの活性化」と「若年層へのリーチ」という目標を掲げ、ブランドをより遊び心があり、参加型で、現代のデジタル環境に適応したものへと進化させることが求められていました。
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- 施策の核心:音と数学が融合した「動く」デザインシステム
・音楽の最小単位である「音符(note)」と、デジタルの最小単位である「ピクセル」を組み合わせた、独自の数学的なグリッドシステムを構築しました。
・フェスティバルの頭文字である「F」をモチーフにしたロゴは、音楽のコード(和音)のように複数の要素で構成され、音の強弱やリズムに合わせて伸び縮みし、複雑なパターンへと変化します。
・「ロゴはパターンであり、パターンはロゴである」という概念のもと、ロゴ自体が生き物のように振る舞い、無限のバリエーションを生み出せる仕組みを開発しました。
・これにより、非常に厳格なルールに基づきながらも、用途に合わせて「静かにささやく(名刺など)」ことも「力強く叫ぶ(屋外広告など)」ことも可能な、極めて柔軟な表現力を手に入れました。
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- 実装と成果:あらゆる媒体を「舞台」に変える表現力
・開発されたデザインシステムは、ポスターやプログラム冊子といった伝統的な媒体から、ウェブサイト、アプリ、衣類、さらにはLEGOブロックやネイルデザインに至るまで、文字通りあらゆる接点に展開されました。
・フェスティバル期間中の街中をこのダイナミックなパターンで埋め尽くすことで、都市全体を一つの大きな芸術作品のように演出することに成功しました。
・戦略的なリブランディングの結果、フェスティバルの観客動員数は2倍以上に増加し、ブランドの認知度と好意度を劇的に向上させました。
・クリエイティブが直接的にビジネスの成長に貢献したことが証明され、後に「デザイン・エフェクティブネス賞(デザインの効果を測る賞)」も受賞しています。
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- クリエイティブ的示唆:ロゴを「静止画」から「行動」へ
・ブランドアイデンティティを「固定されたマーク」ではなく、状況に応じて変化する「振る舞い(Behavior)」や「システム」として設計することの重要性を提示しました。
・音楽という抽象的な概念を数学的な秩序によって視覚化することで、直感的でありながら論理的な説得力を持つブランド体験を創出できることを示しました。
・デザイナーだけでなく、データやテクノロジーをクリエイティブの核に据えることで、ブランドが常に新鮮さを保ちながら一貫性を維持できる「ジェネレーティブ・デザイン」の可能性を世界に知らしめました。



