- 全体概要
・全米最大の家電量販店 Best Buy(ベスト・バイ) と、名門エージェンシー Crispin Porter + Bogusky (CP+B) が展開した、Twitter(現X)を活用したリアルタイム顧客サポート・システムです。
・「Twitter」と「Help」と「Force(軍団)」を組み合わせた造語で、店内の「青いシャツ」を着た従業員たちが、Twitter上で直接顧客の疑問に答える仕組みを構築しました。
・2010年の Cannes Lions(カンヌライオンズ) において、業界の慣習を塗り替える画期的なアイデアに贈られる Titanium Grand Prix および Cyber Lions Gold を受賞しました。
・広告キャンペーンの枠を超え、企業の「組織そのもの」をメディア化し、透明性の高いカスタマーサービスを提供したことで、SNS時代のブランディングの金字塔となりました。
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- 背景と課題:デジタル時代の「店舗」と「専門知識」の価値
・当時、Amazonなどのオンライン小売業の台頭により、実店舗を持つベスト・バイは「価格競争」と「ショールーミング(店で見てネットで買う現象)」という厳しい課題に直面していました。
・消費者が購入前にネットで情報を収集するようになる中、ベスト・バイが持つ最大の資産である「店員の豊富な知識(Blue Shirtの専門性)」をデジタル空間でも活用する必要がありました。
・「どこで買うか」ではなく、「誰から助けてもらうか」という体験をブランドの差別化要因に据え、顧客との信頼関係をデジタルで再構築することが急務でした。
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- アイデアと仕組み:数千人の従業員をサポート部隊に転換
・#twelpforce というハッシュタグを使用し、Twitter上のユーザーが投げかける家電やガジェットに関する悩み(「どのPCを買うべき?」「カメラの設定がわからない」など)を吸い上げる仕組みを作りました。
・ベスト・バイの従業員であれば誰でも参加可能な専用プラットフォームを構築し、数千人のスタッフが日常業務の合間に、自分の専門知識を活かして直接リプライ(返信)を行えるようにしました。
・回答はすべて各従業員の個別のTwitterアカウントから行われ、画一的な「企業の公式回答」ではなく、個々の店員の個性がにじみ出る「人間味のあるアドバイス」を重視しました。
・この取り組みをテレビCMやプリント広告でも積極的に告知し、「何か困ったらTwitterで僕たちに聞いてほしい」というメッセージを広く全米に届けました。
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- 実装と成果:圧倒的なスピードとブランド信頼の構築
・開始から短期間で 2,500人以上の従業員 が自発的に参加し、累計で数万件に及ぶ顧客の質問に回答する巨大なサポートネットワークへと成長しました。
・一般的に企業のカスタマーサービスは返信に時間がかかるものでしたが、Twelpforceは平均して数分から数十分以内という圧倒的なスピードで回答を提供し、ユーザーに驚きを与えました。
・この施策により、ベスト・バイは「ただ商品を売る店」から「テクノロジーの悩みを解決してくれるパートナー」へとブランドイメージを劇的に転換させることに成功しました。
・Twitter上でのポジティブな言及(センチメント)が大幅に増加し、実店舗への来店促進や、ブランドに対するロイヤリティの向上に直結する成果を上げました。
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- 受賞の理由と示唆:広告を「実益のあるサービス」へ進化させる
・Cannes Lions 2010: 従来の「見せる広告」ではなく、ビジネスの仕組みそのものをクリエイティブに変えた点が「チタニウム部門」の精神に合致するとして、満場一致でグランプリに選ばれました。
・従業員のエンパワーメント: 従業員に発信権限を委ねるという「企業の透明性」をいち早く実践し、社員教育とブランディングを同時に成功させたマネジメントの勝利でもあります。
・ユーティリティとしてのブランド: 広告を「情報の邪魔」ではなく、人々の生活を便利にする「サービス(ユーティリティ)」として設計することの重要性を世界に知らしめました。
・クリエイティブの役割の拡張: コピーライティングやデザインの美しさだけでなく、「課題解決のためのシステムデザイン」もまた、現代における最高峰のクリエイティビティであることを証明しました。



