Coca-Cola『Happy ID』| 2014

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  1. 全体概要
    ・ペルーのコカ・コーラが、同国の国家身分登録所(RENIEC)と協力して実施した国民参加型のキャンペーンです。
    ・広告会社「McCann Lima」および「Havas Media Lima」が制作を担当し、Cannes Lions 2014にてMedia Grand Prixを受賞しました。
    ・身分証明書(DNI)の顔写真を「笑顔」で撮影することを推奨し、笑顔の写真を公的なIDとして登録するムーブメントを巻き起こしました。
    ・官民が連携し、無機質な行政手続きをブランド体験へと変容させた、インフラ・ジャック型クリエイティブの最高峰といえます。

  1. 課題と背景:経済成長の影にある「笑顔」の欠如
    ・当時のペルーは目覚ましい経済成長を遂げていた一方で、幸福度調査では南米諸国の中で最低レベルという、国民の心理的充足感に課題を抱えていました。
    ・コカ・コーラは「世界を笑顔にする」というグローバルなブランド使命を持っていましたが、ペルーの人々にとって「幸福」をより具体的で身近なものとして再定義する必要がありました。
    ・ペルーの公式な身分証明書(DNI)の写真は、伝統的に無表情で厳格なものが一般的であり、人々が日常で何度も提示するそのカードには「喜び」の要素が皆無でした。
    ・「最も公式な場所で笑顔を肯定する」ことができれば、国民全体のムーブメントになり、ブランドへの強い愛着を生めると考えました。

  1. アイデアと仕組み:笑顔を検知する「ハッピー・ブース」
    ・笑顔でないとシャッターが切れない、特殊な顔認識テクノロジーを搭載したフォトブース「Happy ID Booth」を街中に設置しました。
    ・このブースで撮影された写真は、国家身分登録所(RENIEC)の公的な基準をクリアしつつ、満面の笑みを湛えたものになるよう設計されました。
    ・撮影したその場で写真をプリントアウトできるだけでなく、そのまま公式なIDの更新手続きに利用できるという、行政サービスと直結した利便性を提供しました。
    ・さらに、笑顔のIDを提示することで、提携するショップや飲食店で割引や特典が受けられるエコシステムを構築し、「笑顔でいること」に実利的な価値を付与しました。

  1. 実装と成果:国民の9割が認知した「笑顔の証明」
    ・ショッピングモールや広場など、人々の生活動線上にブースを設置し、手続きの煩わしさを「楽しさ」へと反転させる体験を提供しました。
    ・キャンペーン期間中に数万人以上が笑顔のIDを新規に作成し、ペルー国民の約90%がこの施策を認知するという驚異的なリーチを達成しました。
    ・この取り組みは数多くのテレビニュースや新聞で「国家を明るくする試み」として無料で大きく取り上げられ、数百万ドル相当の広告換算価値(PR効果)を生み出しました。
    ・結果として、コカ・コーラの「幸福」というブランド指標は過去最高レベルに到達し、ペルーにおけるブランド・フェイバリット(最も好きなブランド)としての地位を不動のものにしました。

  1. 評価と示唆:官僚的なルールを「感情のメディア」へ
    ・Cannes Lions 2014の審査員からは、ブランドが政府組織という最も動かしにくい壁を突破し、国の公式なシステムを自らのメディアに変えた戦略性が高く評価されました。
    ・広告を「見せるもの」から、人々のアイデンティティの一部(身分証)に「残るもの」へと進化させた点が、メディア部門のグランプリにふさわしい革新性とされました。
    ・クリエイティブにおける重要な示唆は、日常の「当たり前」の中に潜む「不自然な厳格さ」を見つけ出し、それをブランドの力で「人間的な喜び」へと解放することにあります。
    ・ブランドが社会のインフラを味方につけることで、一過性の流行で終わらない、長期的かつ文化的なインパクトを創出できることを証明した傑作です。

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