- 全体概要
・オランダの葬儀保険生協「DELA」が、ブランドの再定義と認知拡大のために実施した統合型のブランドキャンペーンです。
・「葬儀で語られるはずの美しい言葉を、相手が生きているうちに伝えよう」というメッセージを核に、一般の人々が大切な人へ感謝を伝える「生前の弔辞」の様子をドキュメンタリーで描きました。
・テレビ、新聞、屋外広告、SNSを連動させ、オランダ全土に「愛を言葉にする」という一大ムーブメントを巻き起こしました。
・Cannes Lions 2013において、メディアの使い方とメッセージの融合が評価され、「Media Lions(メディア部門)」のグランプリを受賞しました。
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- 課題と背景:忌避される「死」のイメージをどう変えるか
・葬儀保険は「死」を連想させるため、多くの人々にとって考えたくない、あるいは事務的で冷たい印象を与える「関与度の低い」商品でした。
・DELAというブランドも、単なる「葬儀の執行者」としてのイメージが強く、消費者との感情的な繋がりが希薄であるという課題を抱えていました。
・競合他社が「価格」や「プラン内容」を競う中で、DELAは「なぜ私たちは葬儀という仕事をしているのか」というブランドの本質的な存在意義(パーパス)を打ち出す必要がありました。
・「死」を売るのではなく、死が意識されることで際立つ「今ある命と関係性の尊さ」を語ることで、人々の心に深く入り込む戦略が採られました。
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- アイデアと仕組み:葬儀の形式を「今」に持ってくる
・「素晴らしい言葉が語られるのはいつも葬儀だが、その時、当人はもうそれを聞くことができない」という極めてシンプルで強力な人間心理の矛盾(インサイト)を突きました。
・一般の人々を募集し、映画館や会議室などの公共の場で、サプライズとして大切な人に感謝の言葉(生前の弔辞)を贈る様子を撮影し、ありのままの感動をCMとして放映しました。
・新聞広告や屋外広告を「空白のキャンバス」として提供し、読者が自分の大切な人へメッセージを書き込めるように設計しました。
・「Why wait until it’s too late?」という問いかけを全ての接点に配置し、保険への加入を促す前に、まず「今すぐ誰かに愛を伝える」という具体的な行動を促しました。
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- 成果と社会的インパクト:ブランドが「国民の共有財産」になった瞬間
・キャンペーン開始後、オランダ国内でDELAのブランド好意度は劇的に向上し、同社史上最高の保険契約数を記録しました。
・新聞広告を通じて投稿された個人のメッセージは数千件にのぼり、ウェブサイトには100万回以上のアクセスが集中するなど、社会現象化しました。
・Cannes Lions 2013ではメディア部門グランプリのほか、プロモ&アクティベーション部門やフィルム部門などでも複数のライオンを獲得し、多角的な評価を受けました。
・審査員からは「メディアを単なる枠としてではなく、人々が愛を表現するための『道具』として機能させた点」が、現代における最高のメディア活用であると絶賛されました。
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- クリエイティブの示唆:ネガティブをポジティブに反転させる勇気
・「葬儀」という究極のネガティブなイベントを、究極のポジティブな感情である「感謝」に結びつけた「リフレーミング(意味の書き換え)」の見事な成功例です。
・プロの俳優ではなく「本物の人々」の「本物の言葉」と「本物の涙」を使うことで、演出を超えた圧倒的な説得力と共感を生み出しました。
・ブランドが主役になるのではなく、消費者の人生の「大切な瞬間」の黒子(ファシリテーター)に徹することで、結果としてブランドへの信頼が最大化されることを証明しました。
・「機能(葬儀の準備)」を語るのではなく「価値(愛する人を想う気持ち)」を語ることが、生活者の行動を最も強く動かすという、パーパス・ブランディングの核心を示しています。



