- 全体概要
・ニュージーランド(NZ)のインターネットサービスプロバイダー(ISP)である Orcon(オーコン) と、広告代理店 Special Group Auckland によるブランディング施策です。
・「Orconのブロードバンドがいかに高速で安定しているか」を証明するため、地球の反対側にいる Iggy Pop(イギー・ポップ) と、NZの一般ファンたちがオンラインでリアルタイムに合奏・レコーディングを行うという挑戦的なプロジェクトです。
・2010年の Cannes Lions(カンヌライオンズ) で Direct Grand Prix を含む複数の賞に輝き、同国史上初の快挙を成し遂げました。
・単なるタレント広告ではなく、製品の「通信速度」と「低遅延」をドラマチックなライブ体験を通じて実証した「究極の製品デモンストレーション」として評価されています。
⸻
- 課題と背景:巨大資本に対する「技術力」の証明
・当時、NZのネット市場は巨大な旧国営企業(Telecom NZ)が独占しており、小規模な独立系ISPであったOrconは、認知度と信頼性の向上という大きな壁に直面していました。
・「インターネットが速い」というスペックの訴求は、どの企業も行っている差別化の難しいメッセージであり、消費者の心に響かせるためには言葉以上の「証拠」が必要でした。
・地理的に孤立したニュージーランドの人々にとって、インターネットは「世界とつながるための生命線」であり、その繋がりがどれほど強固であるかをエモーショナルに伝える必要がありました。
⸻
- アイデアの仕組み:物理的な距離を「0」にする共演
・マイアミのスタジオにいるイギー・ポップと、オークランドのスタジオにいる9人のニュージーランド人ミュージシャン(オーディションで選ばれた一般のファン)をOrconの回線で接続しました。
・イギー・ポップの代表曲「The Passenger」を、数千キロの距離を超えて、遅延なくリアルタイムで同時セッションし、ひとつの楽曲としてレコーディングするという実験的な試みを行いました。
・オーディションの過程からレコーディング当日までをコンテンツ化し、テレビ、ネット、SNSを横断して「Orconなら世界のスーパースターと肩を並べて演奏できる」という物語を構築しました。
⸻
- 実装と成果:ファンを熱狂させた「本物」の体験
・専用サイトを開設し、一般ユーザーからイギーと共演したい楽器演奏や歌の応募動画を募ることで、開始早々からコミュニティを熱狂させました。
・選ばれた幸運なファンたちが、画面越しのイギーと息を合わせ、驚きと喜びに満ちた表情で演奏する様子をドキュメンタリー形式のCMとして放映し、圧倒的なリアリティを演出しました。
・このキャンペーンの結果、Orconのブランド認知度は急上昇し、新規契約者数は目標を大きく上回る数千人規模の増加を記録しました。
・プロモーション費用に対する投資対効果(ROI)は極めて高く、小規模なブランドがアイデアの力で市場を席巻した成功例となりました。
⸻
- 評価ポイントとクリエイティブ的示唆
・Cannes Lions 2010: ダイレクト部門グランプリ、プロモ&アクティベーション部門ゴールド、フィルム部門ブロンズなど、多方面で高く評価されました。
・「実証」のエンターテインメント化: 「通信速度」という退屈なスペックを、「憧れのスターと合奏する」という夢のような体験に変換し、製品の価値を直感的に理解させた点が最大の見どころです。
・双方向性のデザイン: 単に映像を見せるだけでなく、ユーザーが「参加」し、「共創」するプロセスを組み込むことで、ブランドとの深いエンゲージメント(絆)を生み出しました。
・テクノロジー×ヒューマニティ: どんなに高度な技術も、最終的には「人と人を繋ぎ、心を動かすためにある」というメッセージを提示したことが、審査員や聴衆の強い共感を呼びました。



