Jordan Brand『RE2PECT』| 2014

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  1. 全体概要
    ・「RE2PECT」は、ニューヨーク・ヤンキースのキャプテン Derek Jeter の引退シーズンを讃えるために、Jordan Brand と Wieden+Kennedy New York が展開したトリビュート・キャンペーンである。
    ・“Respect”の「S」を背番号2で置き換えた「RE2PECT」をキーコピーに、フィルム・屋外広告・ソーシャルメディア・アパレルなどを連動させ、ファンに「帽子をとって敬意を表する」行為を促した。
    ・キャンペーンはJeter の最後のシーズン(2014年)を通して展開され、YouTubeでの数百万〜1,000万回規模の再生、ソーシャルでの#RE2PECT投稿、限定アパレルの完売など、大きな話題と売上を同時に生んだ。
    Cannes Lions 2015では Integrated 部門のグランプリを受賞し、「非常に抽象的でありながら、とても人間的なキャンペーン」として評価された。

  1. 背景:レジェンドの「最後のシーズン」をどう祝うか
    ・Derek Jeter は、ワールドシリーズ5回優勝、オールスター13回など輝かしい実績を持つ、MLBを代表するショートストップであり、Jordan Brand 最長在籍の契約アスリートでもあった。
    ・2014年、Jeter が19シーズン目をもって引退することを表明すると、ニューヨークだけでなく全米のファンにとって“野球史の終わりの一章”とも言える出来事として受け止められた。
    ・Jordan Brand にとっても、長年ブランドの顔であり続けたアスリートを送り出すタイミングで、「靴の広告」ではなく、彼のキャリアと人格への“敬意そのもの”を表現する必要があった。
    ・同時に、Jeter は敵地でもブーイングではなく拍手を受ける稀有な選手であり、「ライバルチームのファンさえ頭を下げてしまう存在」という普遍的なリスペクトをどうビジュアル化するかが課題だった。

  1. アイデアのコア:「RE2PECT」と“帽子を取る”儀式
    ・コピーの「RE2PECT」は、ヤンキースの背番号2(Jeter)と“Respect”を一体にした記号であり、グラフィックとしてもハッシュタグとしても機能するよう設計された。
    ・キャンペーンを象徴するフィルムでは、ニューヨーカー、ヤンキースファン、バスの運転手、警官、子どもたち、そしてレッドソックスファンまでもが、Jeter に向かって帽子をとり「RE2PECT」を示すシーンが連なっていく。
    ・映像には、Jay-Z、Spike Lee、Billy Crystal、元チームメイトの Mariano Rivera や Andy Pettitte、さらに Michael Jordan、Phil Jackson、スケートボーダーの Eric Koston、NBAオーナーの Jeanie Buss など、多様な「Jeter を敬う人々」が登場する。
    ・フィルムは言葉少なに、帽子をとる、目線を合わせる、スタジアムでのチャントといった「敬意の身体動作」を積み重ねることで、Jeter という人物像と、彼が象徴するスポーツマンシップを情緒的に描いた。
    ・#RE2PECT というハッシュタグは、その“儀式”をオンラインに拡張する装置として機能し、ファンが自分なりの敬意表現を投稿することで、キャンペーン自体が巨大なオマージュ・アーカイブになっていった。

  1. 実装:フィルム、屋外、デジタルをつなぐトリビュート設計
    ・キャンペーンはまずテレビ/オンラインフィルムのローンチから始まり、その後ソーシャルメディア、屋外広告、限定アパレル、Jordan.com上のコンテンツへと展開された。
    ・ソーシャルでは、シーズンを通じてファンに#RE2PECTタグ付き投稿を促し、ジャンプマン公式アカウントなどでハイライトやJeterの受賞歴、エピソード動画をシェアすることで、ストーリーを継続的に更新していった。
    ・Jordan.com では、AKQA が中心となり、Jeter の名場面や受賞歴、特別な RE2PECT コレクションを掲載し、ファンの「帽子を取る」写真投稿をモザイク映像として再構成するデジタル体験をつくった。
    ・ニューヨーク市内の壁面には、巨大な Derek Jeter のポートレートと「RE2PECT」のロゴを描いた屋外ウォールが出現し、公式のハッシュタグ表記を入れなくても、通行人が自発的に撮影・SNS投稿する“聖地”になった。
    ・リテール面では、RE2PECT ロゴ入りの限定Tシャツやキャップが Nike.com や直営店で販売され、Jeter が劇的なサヨナラヒットを打った試合後には、RE2PECT キャップが数分で完売したと報じられている。

  1. 結果:ファン行動とブランドビジネスへのインパクト
    ・RE2PECTのフィルムはYouTube上で900万回以上再生され(当時の数字)、テレビ放映とあわせて全米で大きなバズを生み、Jeter の引退ムードと重なって「その年を象徴するスポーツ広告」のひとつと評された。
    ・ビデオ公開後、Jordan Brand の RE2PECT Tシャツやキャップはシーズンを通して定番アイテムとなり、特にJeter の活躍した試合の直後には売上が急伸するなど、感情とコマースが直結する動きを見せた。
    ・ニューヨークやボストンなどのスタジアムでは、敵地のファンを含め観客全員が一斉に帽子を取ってJeter に敬意を示す光景がニュースで取り上げられ、RE2PECTという文字はユニフォームや記念グッズだけでなく「振る舞いそのもの」を指す言葉として定着していった。
    ・キャンペーン全体は、Jordan Brand にとって Jeter という長年のシグネチャーアスリートの価値を再確認させると同時に、ブランド自体を「勝利」だけでなく「敬意」「品格」といった価値と結びつける役割も果たした。

  1. Cannes Lionsでの評価とクリエイティブの示唆
    ・RE2PECTは、Cannes Lions 2015 において Integrated Lions のグランプリを受賞し、Titanium & Integrated部門の審査委員長 Mark Fitzloff から「とても抽象的でありながら、とても人間的なキャンペーン」と評された。
    ・同キャンペーンはAICP Next AwardsのIntegrated Campaign部門、Clio AwardsのIntegrated部門など、他の国際アワードでも受賞を重ね、「スポーツ広告の新しいクラシック」として位置づけられている。
    ・クリエイティブ的には、①「ブランドのメッセージ」よりも「アスリートへの敬意」を前面に出したこと、②商品露出を最小限に抑えたうえで、映像・屋外・アパレル・ソーシャルを“ひとつの儀式”で束ねた点が特徴的である。
    ・また、「RE2PECT」という一語が、コピー/ロゴ/ハッシュタグ/行為(帽子を取る)を同時に規定する“プラットフォーム・ワード”になっている点は、ブランドアクションの合言葉をどう設計するかという意味で、後続のスポーツ・トリビュート施策の参照例となっている。

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