- 全体概要
・ブラジルのニベアが、子供向け日焼け止めライン「NIVEA SUN KIDS」のプロモーションとして展開した、雑誌広告とモバイルアプリを連動させた施策です。
・ブラジルの広告会社「FCB SÃO PAULO」が手掛け、Cannes Lions 2014においてMobile Grand Prixを受賞したほか、複数の部門でゴールドやシルバーを獲得しました。
・雑誌の広告ページの一部を「迷子防止用のリストバンド」として切り取れるようにし、Bluetooth技術を使って親のスマートフォンで子供の居場所を監視できる仕組みを構築しました。
・日焼け止めが「太陽から肌を守る」ものであるのと同様に、ブランドが「ビーチでの子供の安全を守る」というベネフィットを物理的なツールで体現した、ユーティリティ広告の先駆けです。
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- 課題とインサイト:ビーチに潜む「日焼け以上」の不安
・ブラジルの夏、特に混雑したビーチでは子供が迷子になる事故が頻繁に発生しており、親たちにとって「子供から目を離すこと」は最大のストレスとなっていました。
・親たちは子供の安全を心配するあまり、本来ビーチで楽しむべき日光浴やリラックスした時間を十分に過ごせていないという実態がありました。
・ニベアは、自社の製品が「肌を保護する(Protection)」ものであるならば、ビーチでの体験そのものを「保護」し、親に心の安らぎを与えるべきであると考えました。
・単に「日焼け止めを塗りましょう」と伝える従来の広告メッセージでは、この切実な不安を解消するには不十分であるというインサイトに辿り着きました。
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- アイデアと仕組み:紙の広告を「追跡デバイス」に変える
・ライフスタイル雑誌「Veja」の広告ページに、防水加工を施した特殊な紙製のリストバンドを埋め込み、読者が簡単に切り取って再利用できるようにしました。
・このリストバンドには極小のBluetooth Low Energy(BLE)チップが内蔵されており、低コストでありながら数週間の連続使用が可能な設計となっていました。
・専用のモバイルアプリ「Nivea Protege」を開発し、リストバンドとスマートフォンをペアリングさせることで、個別の追跡システムを構築しました。
・「雑誌広告」という、ビーチへ持ち込まれることの多い伝統的なアナログメディアを、デバイスの「配布プラットフォーム」として再定義した点が極めて独創的でした。
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- 実装と体験:アプリで設定する「安全な境界線」
・親はアプリ上で、子供が離れても安全な距離(最大半径約30メートル程度など)を自由に設定することが可能でした。
・子供が設定された範囲を超えて離れると、親のスマートフォンに即座に警告アラームが鳴り、画面上のレーダーが子供のいる方向を指し示します。
・リストバンドは複数回使用できるよう耐久性が確保されており、一度きりの広告ではなく、バカンス期間中ずっと使い続けられる「ギフト」としての価値を持たせました。
・この仕組みにより、親は子供が近くにいることを確信しながら、安心して日焼けを楽しみ、ブランドへの強い信頼感と感謝を抱く体験へと繋げました。
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- 評価と示唆:広告を「役に立つサービス」へ昇華させる
・カンヌライオンズの審査員からは、モバイルテクノロジーを単なる「画面の中の表現」ではなく、現実世界の深刻な問題を解決する「実用的なツール(ユーティリティ)」に変えた点が絶賛されました。
・ブランドが「自分たちの商品を売るためのメッセージ」を語るのをやめ、「消費者の生活を豊かにするソリューション」を提供したことが、圧倒的なブランド好意度の向上に寄与しました。
・既存のメディア(雑誌)の流通網を活用して、数百万人規模のターゲットに安価にウェアラブルデバイスを届けたという、メディアプランニングの妙も高く評価されています。
・クリエイティブにおけるテクノロジーの役割は、派手な演出のためだけにあるのではなく、人々の「不安」を「安心」に変えるために使われるべきであるという、今日でも通じる重要な教訓を残しました。



