- 全体概要
・2012年6月から100日間にわたり、その日に起きたニュースやトレンドを「オレオのクッキー」だけで表現した画像を毎日ソーシャルメディアに投稿するキャンペーンです。
・FCB New York(旧Draftfcb)とデジタルエージェンシーの360iが中心となり、世界で最も象徴的なクッキーを「現代文化を映し出すレンズ」へと変貌させました。
・毎日1つ、合計100個のクリエイティブを連投するという圧倒的な物量とスピード感は、当時の広告界に大きな衝撃を与えました。
・Cannes Lions 2013において、デジタル領域の最高賞である「Cyber Grand Prix(サイバー部門グランプリ)」を受賞し、リアルタイム・コンテンツの金字塔として歴史に刻まれました。
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- 課題と背景:老舗ブランドをいかに「現代の文脈」で再活性化するか
・2012年に100周年を迎えたオレオにとって、最大の課題は「懐かしのブランド」という枠に収まらず、デジタルネイティブであるミレニアル世代にとって「今、最も関連性のあるブランド(Relevant Brand)」であり続けることでした。
・100周年という節目を、単なる過去の回顧展にするのではなく、ブランドが持つ「遊び心(Playfulness)」を現代のスピード感で証明する必要がありました。
・一方向的なテレビCMなどの「押し付けの広告」ではなく、SNS上でユーザーが自発的に会話に参加したくなるような「対話型のコンテンツ」が求められていました。
・当時のソーシャルメディア活用はまだ手探りの時代であり、ブランドが毎日リアルタイムでニュースに反応するという運用体制そのものが大きな挑戦でした。
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- アイデアの仕組み:クッキーという「最小のキャンバス」で世界を語る
・オレオの象徴的な「黒と白」のビジュアル(時にはフィリングの色を変更)を使い、その日の重大ニュースやポップカルチャー、歴史的な記念日をウィットに富んだアートに変換しました。
・キャンペーンの初日には、プライド月間を祝う「レインボーカラーのフィリングを挟んだオレオ」を投稿し、ブランドの姿勢を鮮明に打ち出すことで大きな議論と注目を集めました。
・その後も「火星探査機キュリオシティの着陸」や「エルヴィス・プレスリーの命日」「パンダの赤ちゃんの誕生」など、その瞬間に世界が注目しているトピックを即座にオレオ化しました。
・オレオの伝統的な食べ方である「Twist, Lick, Dunk(ひねって、なめて、牛乳につける)」の「Twist(ひねる)」という言葉を、「日常のニュースに独自のひねりを加える」という意味に重ね合わせた秀逸なコンセプト設計がなされました。
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- 実装方法:広告代理店を「ニュースルーム」へと変えた驚異の運用
・毎朝、代理店とクライアントのチームが招集され、その日のトレンドや検索急上昇ワードを分析して制作するトピックを決定する「編集会議」のような運用が行われました。
・決定から数時間以内に、デザイナーが実際のクッキーを使って撮影・加工を行い、承認を経てその日のうちに投稿するという、従来の広告制作では考えられないスピードを実現しました。
・キャンペーンの最終日(100日目)には、ニューヨークのタイムズスクエアに「ガラス張りの編集室(ニュースルーム)」を設置し、ファンから寄せられたアイデアをリアルタイムで形にする公開制作を実施しました。
・この100日間の取り組みにより、オレオは単なるお菓子メーカーから、ソーシャルメディア上で「次に何を言うか目が離せない」文化的な発信者へと進化を遂げました。
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- 成果と示唆:カンヌが認めた「広告の新しいあり方」
・キャンペーン期間中、Facebookでのシェア数は前年比で280%増加し、合計で4億3300万回以上のビューを記録、オレオは2012年に世界で最も話題になったブランド(Buzz Increase +49%)となりました。
・Cannes Lions 2013の審査員は、「ブランドがメディア(報道局)のように振る舞い、人々の日常会話の中に自然に入り込んだ点」を高く評価し、サイバー部門のグランプリを授与しました。
・「広告は邪魔なもの」という概念を覆し、ユーザーにとって「毎日届く小さなギフト」のようなコンテンツを提供することが、長期的なファンとの関係構築に繋がることを証明しました。
・この施策の成功があったからこそ、翌2013年のスーパーボウル停電時に伝説となった「Dunk in the Dark(暗闇でもドランクできる)」ツイートという、究極のリアルタイム・マーケティングが生まれたと言えます。



