P&G Always「#LikeAGirl」| 2014

10/10
  1. 全体概要
    ・「#LikeAGirl」は、P&Gの生理用品ブランド Always が、思春期の女の子の自信低下と「like a girl(女の子みたいに)」という言葉の侮辱的なニュアンスをひっくり返すことを狙ったグローバル・キャンペーンである。
    ・クリエイティブは Leo Burnett Toronto(+London/Chicago)と、ドキュメンタリー作家 Lauren Greenfield によるもので、ソーシャル実験型のオンライン動画を中心に展開された。
    ・動画は公開後すぐに世界中でシェアされ、YouTube だけで累計8,500万回以上再生されるなど、「女の子」という言葉と自己イメージをめぐる議論をグローバル規模で喚起した。
    Cannes Lions 2015 では PR グランプリや初代 Glass Lion など複数部門で高く評価され、「フェムバタイジング(フェミニズム×広告)」を象徴する代表例となった。

  1. 思春期の自信低下と「like a girl」という言葉の問題
    ・Always が世界調査を行ったところ、思春期に入ると女の子の自尊心は大きく落ち込み、その落ち込み幅は男の子の約2倍で、一生を通じて元のレベルまで戻りにくいことが分かった。
    ・調査では、16〜24歳女性のうち「like a girl」という言葉にポジティブな印象を持つ人はわずか19%であり、大半が「バカにした言い方」「弱々しい」という否定的な意味として受け取っていた。
    ・89%の女性が「言葉は女の子にとって有害になり得る」と回答し、半数以上が「“like a girl”の意味を変えるムーブメントが必要だ」と感じていたことも明らかになった。
    ・Always にとって思春期は、初めて生理と向き合いブランドと出会うタイミングであり、「自信の危機」と「ブランドカテゴリ」が強く結びつく重要な接点と定義された。

  1. フェイクオーディション形式のソーシャル・エクスペリメント
    ・メイン動画は「オーディション」と称したセットで撮影され、ティーン以上の女性・若い男性・少年少女など、さまざまな年齢の参加者が集められた。
    ・監督が「走ってみて、like a girl で」「投げてみて、like a girl で」と頼むと、ティーンや大人の参加者は、腕をヒラヒラさせたり、へなへなとした走り方をするなど、ステレオタイプな「女の子っぽい弱さ」を演じた。
    ・一方で、思春期前の少女たちに同じ指示をすると、彼女たちは全力で走り、力いっぱいボールを投げるなど、「like a girl=全力で頑張ること」として自然に振る舞った。
    ・そのギャップを見せたうえで、ナレーションとインタビューを通じて「いつから“like a girl”は侮辱になったのか?」という問いを投げかけ、言葉の持つ力と、社会が少女に与えるメッセージの影響を可視化した。
    ・動画の後半では、少女たちに「もう一度、“like a girl”で走ってみて」と依頼し、今度は誇りを持って走る姿を見せることで、「like a girl」をポジティブな意味へ再定義するビジュアル・ストーリーを完結させている。

  1. 展開設計:YouTubeからハッシュタグ、そして Super Bowl へ
    ・キャンペーンはまずロングバージョンのオンライン動画を YouTube で公開し、「#LikeAGirl」というハッシュタグを核に、SNS上での議論とシェアを促した。
    ・その後、60秒に再編集したバージョンが Super Bowl XLIX のCM枠で放映され、「フェミニズム×スポーツイベント」という文脈でさらに大きな注目を集めた
    ・国際女性デーなどのタイミングでは、ユーザーに「自分が誇りを持ってやっていることを #LikeAGirl で投稿しよう」と呼びかけるフォローコンテンツも制作され、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を巻き込んだムーブメントへと拡張した。
    ・PR 面では、調査データとソーシャル実験映像を軸に、メディア露出・講演・教育現場向け資料なども展開し、「広告キャンペーン」を越えた「自信啓発プログラム」としても位置づけられた。

  1. 効果・社会的インパクト
    ・キャンペーン動画は150カ国以上で視聴され、YouTube での再生は8,500万回以上、全体で数十億インプレッション規模のリーチを獲得したと報告されている。
    ・調査では、視聴前に「like a girl」をポジティブに捉えていた16〜24歳は19%だったのに対し、視聴後は76%が「もはや侮辱とは思わない」と答え、2/3の男性も「今後、この言葉を侮辱として使う前に考え直す」と回答した。
    ・ソーシャル上の言及のうちポジティブな感情を示すものは96%に達し、「女の子の自信を応援するブランド」としての Always への共感やブランド好意も大きく伸びたとされる。
    ・市場面でも、ブランド認知・好意度・購入意向の向上、シェア伸長といったビジネス成果が報告され、「Purpose を掲げた文化的なメッセージが、実際に売上にもつながる」ケースとして引用されている。
    ・その後も「Keep Going」などの続編が制作され、「失敗への恐れ」「チャレンジ回避」など、思春期の女の子が抱える新たなテーマにも広がっていき、長期的なブランドアクティビズムへと進化している。

  1. Cannes Lionsでの評価とクリエイティブ上の示唆
    ・「#LikeAGirl」は Cannes Lions 2015 で PR Lions グランプリを受賞し、さらに Glass Lion(ジェンダー平等を扱う作品のために新設された部門)でも初年度のウィナーの一つとして選出された。
    ・そのほか Media や Creative Effectiveness など多数の部門で Gold/Bronze を受賞し、「創造性と実効性の両方を兼ね備えたケース」として Gunn Report などでも代表事例に位置づけられている。
    ・審査では、「プロダクトを前面に出さず、文化的なステレオタイプへの問題提起を中心に据えたこと」が、ブランドアクティビズムとしての先進性と勇気あるスタンスとして評価された。
    ・クリエイティブの構造としては、「調査データ → ソーシャル実験 → 発見されたギャップ → 言葉の再定義 → 行動の呼びかけ」という、非常にシンプルで理解しやすい“ストーリーフレーム”が、グローバル文脈でも機能することを証明している。
    ・また、侮辱としての「like a girl」を、そのままキャンペーン名・ハッシュタグに据え、「敵だった言葉を自分たちのスローガンに変換する」ことで、コピーそのものがムーブメントの旗印になる設計がなされている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です