Pharrell Williams『24 hours of Happy』| 2014

10/10
  1. 全体概要
    ・アーティストのファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)と、パリの制作会社「ICONOCLAST」、クリエイティブ・ユニット「We Are From LA」が共同で制作した、世界初の「24時間連続ミュージックビデオ」です。
    ・楽曲『Happy』のリピートに合わせて、ロサンゼルスの街中で様々な人々が踊り続ける様子を、24時間分(計360シーン以上)撮影し、専用のインタラクティブ・ウェブサイトで公開しました。
    ・Cannes Lions 2014において、Cyber Grand Prix、Design Grand Prixなど複数の最高賞を受賞し、その革新性が世界的に認められました。
    ・単なるプロモーションビデオの枠を超え、ユーザーが時間軸を自由に移動して「今の自分と同じ時間の幸せ」を共有できる、参加型のデジタル体験として設計されています。

  1. 課題と背景:従来のMVの限界と「幸福感」の最大化
    ・楽曲『Happy』は映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』のサウンドトラックとして誕生しましたが、映画の枠を超えて単体での世界的ヒットを狙う必要がありました。
    ・YouTube時代の音楽視聴において、従来の3〜4分間の固定されたビデオ形式では、楽曲が持つ「終わりのない多幸感」や「普遍的なメッセージ」を伝えきるには限界があると考えられました。
    ・デジタルネイティブな聴衆を惹きつけるために、受動的な視聴ではなく、自ら探索し、シェアしたくなるような「プラットフォームとしてのビデオ」が求められていました。
    ・「幸せ(Happy)」という感情は24時間、世界中のどこかで常に起きているものであるという哲学を、いかにして視覚化するかが大きな挑戦でした。

  1. アイデアと仕組み:ユーザーの時間と同期する「時計型」UI
    ・ユーザーがサイトにアクセスした瞬間の現地時間に合わせて、その時間のビデオが自動的に再生される「時計同期システム」を導入しました。
    ・サイト中央には時計の文字盤を模したインターフェースが配置され、ユーザーは文字盤をクリックしてドラッグすることで、24時間の中の好きな時間にジャンプして視聴することが可能です。
    ・全24時間のビデオは、4分間の楽曲を計360回繰り返す形で構成されており、各時間(毎時0分)には必ずファレル本人が登場してパフォーマンスを行います。
    ・「We Are From LA」が開発したシームレスなループ再生技術により、ユーザーがどの時間に移動しても、音楽とダンスが途切れることなく滑らかに繋がり続ける没入感を実現しました。

  1. 実装と社会的インパクト:世界中を踊らせた「ハッピー」の連鎖
    ・ビデオには有名人だけでなく、あらゆる年齢、人種、職業の一般市民が登場し、それぞれの「ハッピー」なダンスを披露することで、多様性と包摂性を体現しました。
    ・この施策は公開直後から爆発的に拡散され、世界150カ国以上のファンが自分の街で踊る「Happy」の二次創作動画をYouTubeにアップロードする「Happy from [都市名]」現象を引き起こしました。
    ・楽曲自体もビルボード・ホット100で10週連続1位を記録し、グラミー賞を受賞するなど、デジタル施策が音楽ビジネスの成功を強力にバックアップした事例となりました。
    ・「24時間いつでも、誰かがどこかで幸せに踊っている」というデジタル上の避難所(サンクチュアリ)のような空間を提供したことが、多くの人々の心に深く刻まれました。

  1. 評価と示唆:テクノロジーは「感情」の乗り物である
    ・Cannes Lions 2014の審査員は、「テクノロジーそのものの凄さではなく、テクノロジーが人々のピュアな感情(喜び)をいかに増幅させたか」という点を高く評価しました。
    ・24時間という膨大なコンテンツ制作という「一見すると非効率な狂気」が、結果としてブランドへの圧倒的なエンゲージメントと信頼を生むことを証明しました。
    ・ユーザーの「今この瞬間(Real-time)」をコンテンツに組み込むことで、インターネット上の体験をより個人的で親密なものに変えられることを示しました。
    ・優れたクリエイティブは、一方的なメッセージの送信ではなく、人々が参加して自分自身の物語を投影できる「器」を設計することにある、という重要な示唆を現代に残しています。

One thought on “Pharrell Williams『24 hours of Happy』| 2014

  1. UNIQLOCKが2007年だから、当然意識されたんだと思うのだけど、何しろ楽曲が素晴らしいし、曲名もHAPPYだし、仕組み側だけじゃなくコンテンツも超強い。2026年にやってもしっかり(というか当時以上に)バズりそう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です