The ALS Association『Ice Bucket Challenge』| 2014

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動画タイトル:Ice Bucket Challenge: Thank You from The ALS Association

  1. 全体概要
    ・「ICE BUCKET CHALLENGE」は、バケツ一杯の氷水を頭からかぶる動画を撮影し、次の参加者を指名しながらALS(筋萎縮性側索硬化症)の認知と寄付を広げたソーシャル・チャレンジ型キャンペーン。
    ・ 2014年夏に世界的バイラル現象となり、約2,200万ドルではなく2億2,000万ドル超の寄付をALS関連団体にもたらし、そのインパクトを評価されてCannes Lions 2015で「Grand Prix for Good」を受賞した。
    ・もともとは米国の患者・家族・友人たちの草の根ムーブメントとして生まれ、ALS Associationなどの団体が急速に対応・最適化することで、前例のない規模のファンドレイジングへと成長していった。

  1. 課題・背景:ほとんど知られていなかったALS
    ・キャンペーン以前、ALSは「Lou Gehrig’s disease」として一部では知られていたものの、米ALS Associationによれば米国人の約半数しか病名を認知しておらず、メジャーな寄付先でもなかった。
    ・研究資金も慢性的に不足しており、新薬開発や臨床試験を進めるスピードが遅く、平均余命2〜5年という厳しい病と向き合う患者・家族にとって「時間との戦い」が続いていた。
    ・ 一方でソーシャルメディアでは「Cold Water Challenge」のような遊び半分の指名リレー企画が広がっており、「テンプレ化した遊び」が多くの人を巻き込める土壌がすでにできていた。

  1. 施策/アイデア:氷水×指名リレーのシンプルなフォーマット
    ・参加者は頭から氷水をかぶる様子を動画撮影し、ALSへの寄付を呼びかけたうえで、次に挑戦してほしい友人や著名人を複数名「指名」するという、非常にシンプルなルール設計だった。
    ・多くのバージョンで「24時間以内にチャレンジするか、寄付するか(または両方)」という制限を設け、ゲーム性と軽いプレッシャーで参加ハードルを下げている。
    ・ルール自体は誰でもコピー可能で、他地域・他団体にも派生できるテンプレートになっており、「ソーシャルチャレンジ」というフォーマットそのものを普及させるきっかけになった。

  1. 実装と拡散:草の根ムーブメントを団体が“キャッチアップ”
    ・発端はゴルファーや友人間のチャレンジ動画で、患者Anthony Senerchiaの家族に向けた支援から、ALS当事者Pat Quinn、Pete Fratesへと伝播し、ボストン周辺を中心にALS支援のムーブメントに転化していった。
    ・2014年夏には、Facebookで2.4百万本以上のタグ付き動画、10億回を超える視聴、7万ツイート/日超のピークなど、爆発的なソーシャルメディア露出を達成し、オバマ大統領、ビル・ゲイツ、レブロン・ジェームズなど多数セレブが参加した。
    ・ムーブメントが一気に拡大したタイミングで、ALS AssociationはPRエージェンシーPorter Novelliらと連携し、寄付フォームのUI改善、若年層向けにわかりやすいコンテンツ整理、メディア露出の最大化などを短期間で実装した。
    ・結果としてALS Associationだけで6週間で1億1,500万ドル超、世界のALS関連団体全体では2億2,000万ドル以上の寄付が集まり、多数の新規ドナー(約250万人以上)を獲得したと報告されている。
    ・キャンペーン後も、ALS Associationは寄付の一部を研究助成・臨床試験・グローバルな研究ネットワーク構築に投下し、研究予算を約187%増やすなど、中長期の組織変革とコラボレーション強化に結びつけている。

  1. 効果・社会的インパクト:資金・研究・議論を一気に前進させた
    ・Natureによると、参加者は1,700万人以上、動画視聴は100億回超、視聴者は約4.4億人に達し、患者数の少ない難病としては異例のスケールで世界の注目を集めた。
    ・その資金により、ALS関連の基礎研究や遺伝子解析、治療候補の臨床試験などが複数立ち上がり、「Ice Bucket Challengeの資金がなければ実現していなかった」研究成果も報告されている。
    ・一方で、「水の無駄づかい」「一過性のスラックティビズム(ゆるい偽善)」といった批判もあり、実際に寄付をしたのは参加者のごく一部にとどまるというデータも示された。
    ・それでも、難病支援や慈善活動のあり方、ソーシャルメディアを使ったファンドレイジングの新モデルなどについて、社会全体に大きな議論を促した点はポジティブなレガシーとして評価されている。

  1. Cannes Lionsでの評価とクリエイティブの示唆
    ・Cannes Lions 2015では、The ALS Associationの「Ice Bucket Challenge」がGold Lion複数に加え、チャリティ系キャンペーンに与えられる最高賞「Grand Prix for Good」に選出され、合計11個のライオンを獲得したと報じられている。
    ・審査では「広告会社主導ではなく、患者・家族・友人など生活者から生まれたムーブメントを、団体・エージェンシーが後から支えた」点、そしてその巨大な成果が高く評価された。
    ・Branded Content & Entertainment部門ではGrand Prixは出なかったものの、Ice Bucket Challengeは“ブランドを越えたカルチャーそのもの”としてGoldを獲得し、ソーシャルチャレンジ型企画を「ブランデッドコンテンツ」の新潮流として位置付けた。
    ・クリエイティブ的には、①極端にシンプルでコピー可能なフォーマット、②参加者が主役になれる自己表現の場、③「指名される」ことで生まれる社会的圧力と連鎖性、④団体側の高速な“後追い設計(ファネル最適化・ストーリーテリング強化)”が、ソーシャル時代のキャンペーン設計の教科書的な要素として示唆されている。

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