- 全体概要
・ユニリーバの石鹸ブランド「Dove」が、長年展開してきた「Campaign for Real Beauty(真の美しさのキャンペーン)」の一環として、2013年に実施したドキュメンタリー形式の動画施策です。
・FBIでのトレーニングを受けた似顔絵捜査官(Forensic Artist)を起用し、女性が「自分で説明した自分の顔」と「他人が説明したその女性の顔」の2種類を描き、その差を提示する実験を行いました。
・自分の欠点ばかりに目がいってしまう女性の心理を浮き彫りにし、「あなたは、自分が思っているよりもずっと美しい」という力強いメッセージを全世界に発信しました。
・Cannes Lions 2013において、広告界の最高栄誉の一つである「Titanium Grand Prix(チタニウム部門グランプリ)」を受賞し、バイラル広告の金字塔を打ち立てました。
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- 課題と背景:自分を肯定できない女性たちの深いインサイト
・調査の結果、自分のことを「美しい」と答える女性は、世界中でわずか4%しかいないという衝撃的な事実が明らかになりました。
・多くの女性は、メディアやSNSが作り上げた「完璧な美の基準」と自分を比較し、鏡を見るたびに自分の小さな欠点(シミやシワなど)を過大評価してしまう傾向にありました。
・Doveはこの「自己認識と他者認識のギャップ」という、誰もが心に抱えながらも言語化できていなかった深い心理的課題(インサイト)に光を当てる必要がありました。
・「石鹸の機能」を語るのではなく、「ブランドの存在意義(パーパス)」として女性の自尊心を高める支援をすることが、ビジネスと社会貢献の両立における大きな課題でした。
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- アイデアと仕組み:科学的な手法を用いた「視覚的な証明」
・「FBIで28年間、数千人の顔を描いてきたプロの捜査官」という、嘘や誇張が通用しないキャラクターを配置することで、実験のリアリティと信頼性を担保しました。
・実験では、捜査官が対象の女性とカーテン越しに対面し、彼女自身の言葉による外見の描写だけで1枚目のスケッチを仕上げました。
・次に、その女性と短時間交流した「初対面の他人」の描写に基づいて、2枚目のスケッチを作成しました。
・最後に2枚の絵を並べて本人に見せることで、自分の説明による絵は「暗く、険しく、欠点が強調された顔」であり、他人の説明による絵は「明るく、美しく、正確な顔」であることを視覚的に突きつけました。
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- 成果とインパクト:バイラル広告史上最大の視聴数とブランド価値の向上
・公開からわずか1ヶ月で、YouTubeでの再生回数が1億1400万回を超え、当時「史上最も視聴されたオンライン広告」としてギネス記録に認定されました。
・世界110カ国以上で配信され、25の言語に翻訳されるなど、国境や文化を超えた「女性の普遍的な悩み」としてグローバルな共感の渦を巻き起こしました。
・受賞歴も華々しく、Cannes Lions 2013でのチタニウム部門グランプリを筆頭に、複数の部門で計19個のライオンを獲得し、クリエイティブと成果の両面で圧倒的な評価を得ました。
・単なる認知度アップにとどまらず、Doveというブランドが「女性のエンパワーメントを支援するパートナー」であるというイメージを不動のものにし、売り上げへの貢献だけでなくブランドへの信頼度を劇的に高めました。
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- クリエイティブの示唆:感情を動かす「実験型コンテンツ」の勝利
・「宣伝」をするのではなく、一つの「感動的な体験(ヒューマン・ストーリー)」を提供することで、視聴者が自ら進んでシェアしたくなるコンテンツ設計の重要性を証明しました。
・広告的な誇張を一切排除し、ドキュメンタリータッチの静かな演出に徹することで、かえってメッセージの純度と説得力が高まることを示しました。
・ターゲットに「私たちの商品を買って」と言う代わりに、「あなたは美しい(You are more beautiful than you think)」と語りかける「ギフト(贈り物)」のような広告アプローチが、現代のコミュニケーションにおいて極めて有効であることを提示しました。
・物理的な製品の特長(Inside)ではなく、消費者の心の中にある真実(Inside Insight)を形にすることが、時代を超えて愛されるキャンペーンを作る鍵であることを教えてくれています。



