Volvo『Interception』| 2015

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  1. 全体概要
    ・「INTERCEPTION(The Greatest Interception Ever)」は、Volvo がスーパーボウルでTV CMを出稿せず、他社の自動車CMの時間帯にだけTwitterでキャンペーンを仕掛けて“視線を奪った”リアルタイム施策である。
    ・視聴者は、他社の自動車CMが流れているあいだに「#VolvoContest」とともに大切な人の名前をツイートすると、その相手に新車Volvo XC60をプレゼントできる抽選に参加できる仕組みだった。
    ・Volvo はスーパーボウルの高額なTV枠を買う代わりに、ライバルのCM露出を“トリガー”として活用しながら、自社への会話と好意をオンライン上に集中させることを狙った。
    ・このアイデアは、Cannes Lions 2015Direct Lions グランプリを受賞し、「スマートで戦略的、クリエイティブでリアルタイムなメディア活用」と評された。

  1. 課題:自動車メーカーの「スーパーボウル投資」の中でどう差別化するか
    ・スーパーボウルは自動車メーカーにとって最重要の広告枠であり、各社が数百万ドル規模の予算で華やかなTV CMを投下するため、メッセージが埋もれやすい環境だった。
    ・Volvo も過去にはスーパーボウルに出稿していたが、同じように高額枠を買っても他社と似たフォーマットになり、「安全性を重んじるブランドらしい、賢い投資と言えないのでは」という課題意識があった。
    ・XC60 は米国での優先モデルだったが、カテゴリー全体で競合メッセージが乱立する中、限られた予算で“好感度・話題・販売”を同時に伸ばす別の打ち手が求められていた。

  1. アイデアのコア:ライバルのCMを「インターセプト」する仕組み
    ・Volvo はスーパーボウル当日のTV枠を一切購入せず、「他の自動車ブランドのCMが流れている時間帯に、Volvoにツイートしてもらう」コンテスト形式のソーシャル・キャンペーンを考案した。
    ・視聴者は、Ford や Toyota など他メーカーのCMが流れた瞬間に、Twitter で「#VolvoContest」とハッシュタグを付けて、大切な人とその理由を書き込むことで、Volvo XC60 プレゼントの抽選対象になった。
    ・これにより、ライバルが数百万ドルを投じて視聴者の注意と感情を喚起した直後、その熱量を“横取り(intercept)”して Volvo の会話に変換する構造が生まれた。
    ・キャンペーンのテーマを「誰か自分の大切な人に車を贈る」という利他的な行為にしたことで、ブランドとしての「人を想う安全・思いやり」のイメージとも自然に結びつく設計になっていた。

  1. 実装:リアルタイム運用とメディア戦略
    ・キャンペーンは Super Bowl XLIX(2015年2月1日)のゲーム時間中4時間のみ実施され、VolvoとGrey、メディアエージェンシーのチームは「リアルタイム・レスポンス」の“ウォールルーム”体制で臨んだ。
    ・当日は、自動車メーカー各社の出稿タイミングに合わせて、#VolvoContest を訴求するプロモツイートを競合ブランドのアカウント名やトレンドハッシュタグにターゲティングし、ツイートの起点をつくった。
    ・チームはツイート内容をモニタリングしながら、感情豊かな投稿をRT・返信で拾い、会話を増幅する役割を担い、コンテスト後には選ばれた受賞者に対して実際にXC60を贈呈した。
    ・VolvoのオウンドチャネルやPRリリースでも、「他社のCM中にVolvoにツイートを」という“逆転の発想”をメインストーリーとして打ち出し、テック系・広告業界系メディアで大きな話題を獲得した。

  1. 結果:会話の独占とビジネスへのインパクト
    ・キャンペーンは4時間で約5万件のツイートを獲得し、その時点でスーパーボウルに出稿していたどの自動車ブランドよりも多く言及されたと報告されている。
    ・#VolvoContest はゲーム中に全米・世界のTwitterトレンドに入り、その夜にトレンド入りした自動車関連ワードはこのハッシュタグのみだったと Twitter 側が紹介している。
    ・メディア露出は80以上の記事と約2億インプレッションのアーンドメディアを生み、スーパーボウルCMに匹敵する、あるいはそれ以上の話題をソーシャル中心に獲得したとされる。
    ・Business Insider などの記事では、Volvo がこの取り組みによって米国での売上(特にXC60)が「ほぼ70%近いリフト」を記録したと紹介されており、「会話のハック」が実際の販売にもつながったケースとして語られている。
    ・Volvo 自身も、従来の高額なTV枠ではなく、ソーシャルを中心に据えたことが「ブランドのスマートさと安全志向を伝えるやり方としてふさわしかった」と評価している。

  1. Cannes Lionsでの評価とクリエイティブ上の示唆
    ・「Interception」は Cannes Lions 2015 で Direct Lions グランプリを受賞し、「ソーシャルメディアを中核にした、プロモーション/アクティベーション/ダイレクトマーケティングの新しい顔」として位置づけられた。
    ・審査員長のコメントでは、「Volvo はスーパーボウルの文法に従うのではなく、“逆走”してまったく新しい会話をつくった」と評され、戦略性・リアルタイム性・シンプルさのバランスが受賞理由として挙げられている。
    ・クリエイティブ的には、「他社の広告枠をトリガーにする」「ハッシュタグだけで成立する」「誰かのために応募する」といった要素が組み合わさり、広告費をかけずに他社の投資をレバレッジする“メディアハック”として完成している。
    ・このケースは、「広告を作る」のではなく「既存のメディア構造と人の行動をどうデザインし直すか」という、プロモーション/PR系アイデアのモデルケースとして多くの解説で引用されている。
    ・また、プレゼントキャンペーンでありながら、「自分が乗りたい車」ではなく「誰かに贈りたい車」を軸にした点が、Volvo の“人を守る、想う”ブランドパーパスと一貫しており、単なるアンブッシュに留まらない厚みを与えている。

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